「ブリーチをすると髪が傷む」という話がありますが、一般的なヘアカラーは髪をブリーチすることで髪を明るくしています。このことから一概に「ブリーチだから髪が傷む」というのは間違った解釈かもしれません。ということでここではヘアカラーの種類と仕組みについて。
目次
ヘアカラーの種類
カラー剤は大きく分けて染毛剤と染毛料に分けられます。ヘアカラーやブリーチ、白髪染めなどは医薬部外品である染毛剤に分類され、ヘアマニキュアやカラーリンス、カラースプレーなどは化粧品で染毛料になります。まずはじめにヘアカラー剤の仕組みを簡単に説明しましょう。市場にでているヘアカラー剤は美容室専用のプロフェッショナル製品をはじめ、ドラッグストアやコンビニ、ネットなどで数多くの種類が販売されています。そしてどんなヘアカラーを使用するかで、仕上がりや色持ちは大きく異なります。そのため、それぞれのカラー剤の特長を理解しておくことが大切です。
髪の色を変えるヘアカラーの方法は大きく分けて以下の3種類あります。
・ブリーチをして髪を明るくする方法
・色素を髪に加える方法
・上記2つを組み合わせた方法
非常にシンプルです。そしてよく「ブリーチは傷むから!」と言われますが、専門的にいえば髪を明るくする方法はブリーチすることでしかできないのです。ですから一般的に「ブリーチで傷む!」と言われているのは、非常に明るくするパワーを持つ薬剤を指していると思われます。しかし本来はブリーチの仕方(薬剤や時間も含めた方法)によって髪の明るさをコントロールしているだけなのです。それでは次にカラーの仕組みを具体的に見ていきましょう。
カラー剤の仕組み
髪というのはケラチノサイトとメラノサイトによって作られています。そしてこのメラノサイトによって作られるメラニンがないと白髪のように髪に色はつきません。 カラー剤で髪をブリーチすることでメラニン色素が破壊され、メラニン色素が抜けた分だけ髪の色は明るくなります。
この時カラー剤というのはアルカリによってキューティクルを立ち上げ薬剤の浸透を促進させます。そして髪の中のCMCという成分を道とします。この時ただ単に通過してくれれば良いのですが、そのCMCをブルドーザーのように破壊しながら染料を浸透させてしまいます。
メラニンにも種類があって、ユーメラニンとフェオメラニンに分かれます。ユーメラニンはカラー剤で簡単に壊す(退ける)ことができるのに対し、フェオメラニンは中々頑張り屋さんです。髪をブリーチしたことがある方なら分かると思いますが、髪を白くするのは難しいことです。金髪から白髪のように髪を白くするのが困難な理由は、このフェオメラニンの影響です。
メラニンがカラー剤でブリーチされ、そこにメラニンホールというメラニン色素が抜けた穴ができます。そこの穴にカラー剤の色素が入ります。今回は赤みの色を入れたイメージにしてみました。そうすると残ったメラニン色素とカラー剤の染料が混ざりあったような色味に見えます。
髪をブリーチすればするほど元のメラニン色素がなくなり、髪はその分明るくなります。髪に透明感を出したければこのメラニンは邪魔になるので、それを退けるためにどんどんブリーチしなければいけないのです。
メラニン色素を退ける仕組み
メラニン色素を退けるには、アルカリと過酸化水素を混ぜることでできる酵素が必要になります。過酸化水素だけでも濃度や髪質によっては髪を明るくできますが、より効率よくメラニン色素を髪から退けるにはアルカリがあるほうがいいのです。
カラー剤の染料の仕組み
カラー剤の染料は色々あるのですが、よく使われるカラー剤の染料、つまり色もアルカリと過酸化水素を混ぜることでできる酵素が関係しています。カラー剤の色というのは、元々は小さい子供達の実のようなものです。このときに実にまだ色はついていません。先ほどあったように酵素の反応で子供達が手をつなぎわせることによってはじめて色が発色するのです。
髪の中に入るときは入りやすいように小さなままで、髪の中で手をつなぐことで色が発色して大きくなり、髪の外に出にくくなるのです。このことから髪を染める直前にカラー剤をつくらなければ、髪の中に入る前に色同士が手をつないでしまい、髪の中に入りにくくなります。カラー剤は髪に塗る直前に混ぜなければいけないのです。
また色というのは色味によってその大きさが変わります。赤い色は小さく、アッシュ系などは大きい染料(色)です。そのため赤い色は髪に入りやすく、抜けやすいという特徴があります。また、アッシュ系は浸透しづらく入りづらい染料という特徴があります。
ファッションカラーとグレイカラーの違い
「今まで明るいヘアカラーをしてたけど、そろそろ白髪も気になってきた…」
「白髪染めって暗くなるイメージがあるから白髪染めはしたくないな~」
「そもそもファッションカラーと白髪染め(グレイカラー)の違いって何?」
ヘアカラーを楽しむ一方で、年齢と共に白髪も気になりだしてくる方もいるでしょう。白髪染めというとなんだかネガティブなイメージが先行しますが、カラー剤というくくりで考えると仕組みは単純です。そこでヘアカラーを楽しむためにファッションカラー(おしゃれ染め)とグレイカラー(白髪染め)の違いについて解説します。
ファッションカラー
一般的に「おしゃれ染め」として使われる「ファッションカラー」は、髪を明るくしながら色素も同時に髪に加えていくタイプがほとんどです。もし色素を加えないのであれば、それは髪を明るくするためにブリーチだけしているということになります。
グレイカラー
次はグレイカラーです。グレイカラーというのは、要は白髪染めのことです。カラー剤は明るくしながら色素を加えていくとありましたが、「白髪染めは何が違うの?」と思いませんでしたか?
グレイカラーといっても、髪を単純に暗くするだけがグレイカラーではないです。例えば髪を明るくしながら、白髪を染める人もいます。ですから基本は同じです。それでは何が違うのでしょうか?
白髪の特徴
それは白髪がある方なら知っていると思いますが、白髪は黒髪よりも硬いのです。白髪が気になるからといって短く切ったら、ピンピンに立って逆に目立ってしまったりするものです。そのくらいハリがあります。要は白髪は結構頑丈ということです。
このことから、髪質にもよるのですが、グレイカラーのお薬はファッションカラーのお薬よりも薬剤そのものが強い場合があります。白髪は頑丈な髪質の場合が多いため、お薬のパワーを上げないと薬がきちんと作用しない場合があるからです。
美容室などでは髪質や希望に合わせてお薬を調合していきますが、ホームカラーなどの場合には「染まらないと売れない、あるいは明るくならないと売れない」となりますで、お薬のパワーが強い傾向があるような気がします。
またグレイカラーは白い髪にも色素をある程度入れることでカラーとして成り立つので、ファッションカラーに比べて色素の量は多めに入っていることが多いです。そのため毎回毛先までグレイカラーで染めてしまうと、毛先だけが暗くなってしまったりするので注意が必要になります。
ヘアマニキュア
(1)酸性染料
一般的なカラー剤はアルカリ性であるのに対し、ヘアマニキュアは酸性です。そしてこの染料はマイナスの電荷を持っています。髪は酸性に傾けるとプラスの電荷を持つため、このマイナスの酸性染料とくっつくようになるのです。これを専門的に言うと「イオン結合」で染色するということになります。
カラー剤に比べてアレルギーは出にくいですが、頭皮が染まりやすいという欠点があります。ですからマニキュアは地肌につけない(つかない)ように塗布しなければならず、頭皮に優しいと言われるはそのためかもしれません。
(2)浸透剤
酸性染料を毛髪へ浸透させるのを補助するために、ベンジンアルコールやエタノールなどが添加されています。言い方は悪いですが、このアルコールで髪の表面を少し溶かして染料の浸透を手助けします。
カラー剤はアルカリで髪のCMCをどんどん削って浸透させるので、それに比べれば、そのダメージは比になりません。いずれにしてもCMCを失いやすいのであれば、CMCを補給すればよいということです。
(3)酸
ヘアマニキュアは酸性の染料で、髪が酸性でなければ髪とうまく結合してくれません。ですから髪を酸性にしてプラスイオンを増加させるために「酸」が使用されます。クエン酸、グリコール酸などがよく利用されます。
(4)その他
カラー剤もヘアマニキュアも使われる染料は疎水性です。また、健康な髪も疎水性です。ヘアマニキュアはこの疎水性同士がイオン結合で吸着して、疎水結合で定着する仕組みになっています。傷んだ髪の場合は髪が親水性になっていますので、染料の定着が弱まってしまいます。
またカラー剤のように髪を明るくする力はないので、自身の現在の髪の色に染料が重なった色味に仕上がります。オレンジの色味であれば黒い髪はほぼそのままの色で、白髪はオレンジに、少し明るい茶髪であればオレンジブラウンのようなイメージで仕上がります。
ヘアマニキュアのまとめ
以上のヘアマニキュアの特徴をまとめると、
・地毛の色(現在の髪色)に染料の重なった色味に仕上がる
・毛髪内の浅いところに浸透する
・髪の損傷が少ない
・頭皮がかぶれる心配が少ない
・色落ちがしやすいが、加温する(温める)ことで落ちづらくなる
・地肌が染まりやすい
ちなみにご自宅で白髪や髪を染めることができるトリートメントカラーというのも、ヘアマニキュアのような染料で染める商品となります。
ヘナ
「ヘナ」という植物は数千年前から使われ、クレオパトラが愛用していたことは有名な話です。自然が与えてくれた恵みである「ヘナ」の特徴についてまとめます。
1. ヘナの色
1−1 ヘナの色味はオレンジだけ
ヘナカラーといってもたくさんの色味があるように思えますが、ヘアカラーに使用されるようになり、需要に合わせて変化させられているため、純粋な「ヘナ」の色味はオレンジの色素を持っているだけです。ですからそれ以外の色はありません。
もしもヘナと言われてオレンジ以外に染まるのであれば、他の染料を混ぜてあるハイブリッド系のヘナで、これはよくも悪くも言われますが、それは使う人によります。正解はありません。
ハイブリッドタイプはカラー剤の染料が入るため、染まりがいいという特徴があります。しかし、カラー剤にアレルギーがある方は使用できないため注意が必要です。
1−2 オレンジになるのが嫌ならインディゴを足す
ここでは人工の染料を利用しないで、天然の色素だけの話をします。しかし人工の染料が必ずしも悪いということではないのでそこはご理解ください。
頭皮や環境にいいといっても髪がオレンジになるのがどうしても嫌という場合には、インディゴを混ぜる、もしくは重ねる方法があります。
インディゴの色素は青色ですので、
オレンジ+青=茶色
という図式になります。そしてインディゴの染料を増やすほど、暗く(茶色が濃く)なります。
ヘナとインディゴの配合比率で、ナチュラルなブラウンから濃い茶色まで作れるわけです。ダメージが出ないので毛先などが退色しやすい(明るくなりやすい)方にはもってこいとなる訳です。
2. トリートメント効果
2−1 ダメージを補修する
ヘナのオレンジの色素は科学的にはローソンと呼ばれ、正式名称は2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンです。この染料がダメージを受けた髪に吸着する(ダメージホールを埋める)ことが、ヘナがトリートメント効果がある理由です。
しかもこのヘナは毛髪のたんぱく質と強固に繋がる特徴があるため持続性が高いという特徴もあります。実際にヘナを体験した方ならわかりますが、そのオレンジはヘアカラーと比較すると持ちが違います。
2−2 紫外線から守る
ヘナの色素であるローソンには、紫外線を強く吸収する効果があります。
2−3 収斂作用がある
収斂作用とは、髪を引き締める効果があることです。例えば傷んだ髪はブヨブヨしています。収斂させることでよれた髪をピシッとさせます。年配の方や細毛の方にヘナが人気の理由はこのためです。
3. ヘナの欠点
3−1 色がつく(染まる)
ヘナの欠点はいうまでもなく、染める気がなくてもその色がついてしまうことです。色がつくことに問題がなければいいのですが、色がつきたくない方には使用できません。でもすぐに髪が真オレンジになるほど色味は濃くありません(髪質にもよります)。
3−2 匂いがつく
草の匂いがします。当然匂いの感じ方は個人差があります。また匂いはシャンプーや時間の経過とともに自然になくなっていきます。
3−3 回数を重ねないと結果が出ない場合がある
一度では色が薄いといわれるように、色味で考えても、トリートメントとして考えても一度で結果が出ない場合もあります。
3−4 髪がきしむ場合がある
トリートメント効果で「収斂作用がある」と書きましたが、引き締め効果がデメリットになる場合もあります。特に傷みすぎている髪は注意が必要です。
きしみの解消法としては、髪の内部に浸透するようなトリートメントで引き締めを軽減するようにすることです。髪の内部がスカスカのままで髪を引き締めるとガサつきが出やすいですが、髪の内部に浸透するような成分で先に髪を埋めることでクッションのように和らげたり、ヘアオイルなどで髪の表面のガサつきを軽減したりすることも可能です。また、ヘナの塗布時間を長く置くことでヘナに含まれる油分が髪と馴染んできしみが解消される場合もあります。
3−5 施術直後のシャンプーは気を付けましょう
これはヘナだけではなくヘアカラー全般に言えることですが、施術直後2~3日はシャンプーするとオレンジ色が出やすくなります。使用するタオルなどは気を付けましょう。
3−6 アレルギーについて
アレルギーがあるのでヘアカラーができない場合があると思います。そういった方でもヘナカラーなら問題なく染められるかといったら、そんなことはありません。食べ物でもそうですが、すべてのモノに100%安全なモノは存在しません。もし心配であれば必ずテストを行いましょう。
ヘナのまとめ
・色味はオレンジになる。オレンジが気になるならインディゴを混ぜるなどして調節する。
・トリートメント効果には、ダメージ補修、紫外線抑制、引き締め効果がある。
・欠点は、
色味がつく(色を入れたくない人には不向き)、匂いがする、回数を重ねないと効果が感じられない場合がある、髪がきしむ場合がある(回避することもできる)、施術直後は色落ちする場合がある、ということがある。
100%天然であるからヘナが優れている訳では決してありません。欠点も当然あります。
天然のモノであるため不安定な要素の強いヘナですが、メリット・デメリットを把握して上手に使いこなしましょう。
商品は特徴を理解して正しく使用してこそ、最大限の力を発揮します。
塩基性カラー
塩基性カラーとは、髪の表面に付着して色をつけるヘアカラーの一種です。通常の酸化染毛剤とは異なり、アルカリカラーや酸性カラー(ヘアマニキュア)よりも髪に負担が少ないとされています。ここでは、塩基性カラーの特徴や利点、注意点について説明します。
1. 特徴
・物理的に髪に付着
塩基性カラーは、髪のキューティクルを開かず、髪の表面に色素が付着する形で髪を染めます。これは、酸化染毛剤が髪内部に入り込み、酸化反応を起こして色を変える仕組みと異なります。
・髪に優しい
塩基性カラーは髪に負担が少なく、ダメージを受けやすい髪でも使用可能です。染料が髪内部に浸透しないため、毛髪のダメージを防ぎやすいというメリットがあります。ただ髪の色を明るくする場合にはアルカリ剤の使用があるので使い方によってダメージが変化します。
・色持ちはやや短い
色素が髪に物理的に付着するだけで内部に浸透しないため、シャンプーなどで色落ちしやすく、長期間保持されないのが特徴です。平均的には1〜2週間ほどで色が抜けてしまいます。
2. 利点
ブリーチなしで明るい色に染めやすい
髪に色をのせるため、元の髪色が明るいほど、カラーバリエーションが豊富に楽しめます。
髪のダメージを最小限に
酸化染毛剤のようにアルカリ剤を使わないため、髪や頭皮に優しいです。ダメージを受けやすい髪質でも安心して使えるという点で、トリートメントカラーとして多くの利用者に支持されています。
3. 注意点
一時的な染色
塩基性カラーは持続性が短いため、定期的なケアや再染色が必要です。特に汗や水に濡れると、色落ちが早まることがあります。
脱色が難しい場合も
使用されるものによって、色素が髪に強く付着することがあり、次回のカラーリングや色の変更時に影響することがあります。ダーク系に多いですね。この場合は、専用のリムーバーや脱色などが必要になる場合もあります。
4. 使用例と用途
ファッションカラーやインナーカラーなど、短期間だけ鮮やかな色を楽しみたいときに塩基性カラーはよく使用されます。
トリートメントカラーとしても使用され、カラーリングと同時に髪の保湿や補修が期待できるタイプもあります。
塩基性カラーは、髪に優しく、短期間のカラーチェンジを楽しむためのアイテムです。ダメージレスで、様々なカラーバリエーションを楽しみたい方に適していますが、色持ちが短いため定期的なケアが必要です。